通称・金持ちクラブ。
経済協力開発機構(OECD)加盟国が行っているPIAACやPISAなどの国順リスト調査結果は、国の威信がかかっている。政治的な責任が問われるから、不面目な恥ずかしい結果は公表しづらく、できればいちゃもんをつけてごまかしたい。逆にいい結果は、誇張したいという各国の裏事情があるようだ。
OECDに限らず国際調査結果を見ると、世界のどこにも完璧なユートピアの国はないとあらためて感じる。
日本はどうだろう。どうも関係者から聴いた情報と日本の文部科学省・報道発表内容との間に、ズレがあるように思う。
東洋大学の山田肇教授が、『「成人力」報道は記者の怠慢』という記事に下のようにまとめている。私も山田教授に(この記事に限り)、同意する部分が多い。
「10月8日から数日間、国際成人力調査が各紙で報道された。国際成人力調査はOECDが世界24か国・地域で実施した大規模調査で、日本は読解力と数的思考力で1位、ITを活用した問題解決力で10位だった、というのが記事の概要である。わが国の教育制度や就職後の社内教育が優れていることの証明である、 と多くの記事に書かれていたが、僕は大きな疑問を持った」
www.huffingtonpost.jp - Hajime Yamada
日本は読み書きや計算の習熟度で世界トップ・クラスなのに、職場での技能活用におとると評価された。これからOECDのエコノミストや他の学者たちが、さらに論文を発表するだろうが。日本の結果は特筆すべき現象だったようだ。
skills.oecd.org - OECD Skills Outlook 2013 (pdf)
www.oecdepublishing.org - Multilingual Summaries - 日本語 (pdf)
山田氏が指摘しているように、報告書(一次情報)を読まず二次情報にもとづき記事を書いた怠慢な記者がいるのかもしれないし、また「女性の力」が発揮できない日本の労働市場環境もあるかもしれない。世界経済フォーラムが発表した、2013年版の日本の男女平等(ジェンダー・ギャップ)指数は136カ国中105位で、先進国でも異例の低さだ。
あわせて、461ページからなる報告書を読みとく担当省庁の役人の能力、および指摘された「問題を認識し解決する能力」も、批判的に評価する必要があるかもしれない。
基礎力はあるのに、実務でいかしきれない。あるいは無数にある既存の知見を入手・吟味・批判し、組みあわせ、独自の論や説をうちたてる応用力・問題解決力におとるということは、何を意味するのだろう?
職場で専門能力をたかめる教育やチャンスが制限され、逆に労働者の応用力を阻害し、従順さや迎合をひきたてる日本の労働環境を裏づけてはいないだろうか。
さらに権力者から見れば、国民の高識字率を逆手にとり、誤報や偏向報道で世論を誘導しやすいともいえないだろうか。
応用力におとると、相手の論や説のあまいところや誤りをやんわりと、あるいはシュレッダーのようにことごとく言い負かすのがお決まりの学際的な論戦で、大破されてしまう。
競争特性が求められるグローバリゼーションで、かなりのハンディを抱えることになる。
日本の弱みを批判的に分析して、今後の政策課題に役立てるべきだと思う。
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